青山学院大学 総合研究所
            AOYAMA GAKUIN UNIVERSITY RESEARCH INSTITUTE

健康的な生活のための水質測定技術の開発

2019年度 SDGs関連研究補助制度 採択課題

研究者:黄 晋二

本研究では、グラフェンをチャネルとする電界効果トランジスタ(GFET)をベースとするセンサを作製し、水道水の殺菌に使用される遊離塩素濃度の計測へ応用することを目指している。これまで、GFET のゲート電極にグラフェンを用いることで遊離塩素の高感度測定に成功している(2019 年 9 月の第 80 回応用物理学会秋季学術講演会にてポスター発表)。しかし、従来の GFET 塩素センサには、測定を重ねるごとに取得データがシフトするという課題があった。これが、グラフェンチャネルに残留する電荷のためであると仮説を立て、この解決方法について検討を行った。出力信号の安定性を向上させることを目的とし、図 1 のように Ag/AgCl 電極を追加した構成の塩素センサを作製した。従来の Ag/AgCl なしの塩素センサの場合には、図 2(左)に示すように電流極小点が測定を繰り返す度にシフトしていた。本研究で提案するGFET 塩素センサでは、この電流極小点の電圧値を用いて残留塩素濃度をセンシングするため、このシフトは測定値の再現性と信頼性を損なうものであった。一方、新しい塩素センサにおいて、測定ごとに Ag/AgCl 電極をチャネルと電気的に一旦接続する処理を行ったところ、チャネルの表面電荷を初期化することに成功し、実際に、繰り返し測定時の電流極小点のシフトが観測されなくなった(図 2(右))。以上のように、Ag/AgCl 電極をセンサの構成に加えることで、GFET 遊離塩素センサの測定精度を向上させることに成功し、実用的なセンサ開発へと研究を前進させることができた。

図1:GFET遊離塩素センサの構成 (左)従来の構成:Ag/Ag