青山学院大学 総合研究所
            AOYAMA GAKUIN UNIVERSITY RESEARCH INSTITUTE

循環型サプライチェーンにおける再生歩留りが引き起こすパラドックス

2019年度 SDGs関連研究補助制度 採択課題

研究者:細田 髙道

持続性の高い循環型社会構築の重要性から、使用済み製品(例えばペットボトル)の回収に多くの企業や自治体が取り組んでいる。しかしながら、回収後に再生される割合は極めて低く、多くの使用済み製品は埋め立てや焼却処分となっている。ペットボトルのように高回収率であっても再生は促進されない理由には再生技術と再生コストの問題があると思われる。再生技術については、使用済みペットボトルのみからペットボトルやポリエステル繊維を再生する技術は確立されており、徐々にではあるが普及しつつある。今現在の最大の問題は再生コストであろう。

本研究では、再生技術と再生コストの問題が完全に解決された理想的な状態を前提とする。つまり、製造業者と再生業者からなる循環型サプライチェーン・システム(上図)において、使用済み製品を原料として製品を製造する再生コストが、(石油由来の新しい)原材料から製品を製造する製品製造コストよりも安くなった状況を前提とする。このような理想的な状況において、回収した使用済み製品をできるだけ多く活用し再生することは、はたしてシステム全体のコストを常に最小化するのであろうか? というのが本研究の問いである。

多くの場合、コストが安い再生を増やし、同量をコストが高い製造量から減らせばトータルのコストは低くなると予想しがちである。しかしながら、我々のこれまでの研究では、市場からの需要量と回収量との間にどの程度の相関があるかによってトータルのコストは低くなる場合もあれば逆に高くなる場合もあることを見出した。このトータルコストが高くなってしまう現象を「再生歩留りのパラドックス」と名付けた。トータルのコストが高くなってしまうのであれば、経済性を重視する企業であれば使用済み製品の回収と再生をする動機がなくなってしまうことになり、持続的社会構築という視点からは望ましくない状況となる。

2019年度においては、協力研究者(英国)とともに以下の内容を実施した。まず最初にどのような時に再生歩留りのパラドックスが発生するのか(発生のメカニズム)について数学的に解析を開始した。さらに再生歩留りのパラドックスが発生している場合に経済性を重視する企業に対してどうすれば回収と再生をする動機を与えることができるかについて、簡易な数値検討を実施した。2019年度は補助制度開始から年度末までの期間が短いこともあり具体的成果までは出せていないが、次年度へと研究を継続してく為の基礎的な検討を実施するこができた。