青山学院大学 総合研究所
            AOYAMA GAKUIN UNIVERSITY RESEARCH INSTITUTE

プロジェクト型学術英語論文執筆に対する学習資源支援方法の構築:学生の文化資本育成

2019年度 SDGs関連研究補助制度 採択課題

研究者:山村 公恵

プロジェクト型学術英語論文執筆に学生の「文化資本」(Bourdieu,1986)がどのように反映されているのかを研究課題とし、応用言語学の視点から研究活動を行った。

本研究におけるプロジェクト型学術英語論文執筆とは、アクティブラーニングを取り入れた英語の授業でのアカデミックライティングを指す。執筆するテーマや内容をグループ活動や個人活動を通して学生が主体的に決めたうえで、英語で執筆する学習を想定している。また、「文化資本」(Bourdieu,1986)とは、学生の家庭における文化物(書籍、漫画、絵画など)の所有や、これまでの学習経験、教育環境、文化的経験(旅行、美術館・博物館に行くなど)を指す。こうした「文化資本」(Bourdieu,1986)は、学生が学術的な能力を構築する学習資源となる一方で、家庭の経済的事情等を有形・無形に反映するとみなす。

近年では大学教育への平等なアクセスの保証により学生の多様化が進んでいる。本研究目標は、学生の「文化資本」(Bourdieu,1986)という学習資源の不均等を緩和し、プロジェクト型学術英語論文執筆という大学教育を通した社会階層構造の再生産を低減することである。また、こうした目標を学生の教室外での学習を支える学習支援施設が担うことができると考える。

今回の研究期間は、採択後の12月末から2020年3月までであった。2月から3月初旬までにプロジェクト型学術英語論文執筆授業の受講経験者13名に対してオンライン質問紙調査及び半構造化面接調査を実施した。(a) 学術英語論文の授業内容・執筆内容・評価について、(b) 文化物の所有・文化的経験・教養的経験について、(c) 英語学習経験・文化的経験・教養的経験と英語論文の執筆内容との関わりについて調査した。以下の調査結果を得た。

  1. 参加者の (a) プロジェクト型学術英語論文の授業内容・執筆内容・評価、(b) 文化物の所有・文化的経験・教養的経験に関する情報をオンライン質問紙調査にてあらかじめ収集した。
  2. 質問紙調査をもとに (c) 英語学習経験・文化的経験・教養的経験と英語論文の執筆内容との関わりを中心に半構造化面接調査を行った。大学英語教育におけるプロジェクト型学術英語論文執筆を起点とし、参加者の幼少期から現在に至るまでの英語学習軌跡、学習への取り組み姿勢、趣味的活動と英語論文執筆との関わり、評価と競争に関する語りを得た。参加者の語りについては、今後、個々人に焦点をあてながら多角的かつ慎重に分析を進めていく。
  3. 大学1年生を対象としたプロジェクト型学術英語論文執筆の場合、英語の授業で執筆構想についてグループ活動や議論を行う機会を取り入れている場合においても、当該授業での活動や議論ではなく、小中高や他の学校での学習内容・経験、個人の読書体験、趣味、家族との対話から執筆内容の着想を得ているようであった。
  4. プロジェクト型英語論文の執筆内容の着想に学生の「文化資本」が反映される傾向は理系及び人文系の専攻所属の参加者にともに見られた。

加えて、2月下旬には、報告者が所属するライティングセンター関連学会(The Twelfth Symposium on Writing Centers in Asia)において、本研究を立案するきっかけとなった予備的調査について報告した。

今回の研究成果をもとに研究を継続し、プロジェクト型学術英語論文執筆のための、文化的体験・教養的体験としての学生の学習資源の支援方法、すなわち「文化資本」育成方法を考案する。将来的には、学習支援施設等において支援方法を導入し、検証する。